家事按分とは
自宅で仕事をしていたり、私用のスマートフォンを仕事にも使っていたりすると、プライベートと事業が混ざった支出が発生します。こうした支出のうち、事業で使った割合だけを経費にすることを家事按分といいます。
たとえば家賃10万円の部屋の一室を仕事に使っているなら、家賃全額ではなく「仕事で使っている割合」に相当する金額を「地代家賃」として計上します。
按分の基本ルール
- 業務に必要な部分を明らかに区分できること … 家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます(国税庁 No.2210)
- 50%を超えるかどうかで判定する … 所得税基本通達45-2: その支出する金額のうち業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定する。ただし、必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、その必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない
- 総合的に勘案して判定する … 所得税基本通達45-1: 業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する
- 按分の基準の例(筆者の例) … 床面積、使用時間、使用日数、走行距離など、その支出の性質に合った基準
- 記録を残す(筆者のすすめ) … 間取り図、使用時間のメモ、走行距離の記録など、区分の根拠になる資料を保管する
- 毎年同じ基準で計算する(筆者のすすめ) … 年によって基準が変わると、区分の根拠を示しにくくなる
家賃・地代の按分(計算例)
床面積で按分する
もっとも説明しやすい方法です。
| 前提 | 数値 |
|---|---|
| 住居全体の床面積 | 40㎡ |
| 仕事専用にしている部屋 | 8㎡ |
| 事業割合 | 8 ÷ 40 = 20% |
| 月の家賃 | 100,000円 |
| 経費にできる家賃 | 100,000 × 20% = 20,000円/月(年24万円) |
ワンルームで明確な仕事部屋がない場合は、「仕事に使っている時間帯 × 使っているスペースの割合」で計算する方法もあります。たとえば1日のうち8時間を仕事に使い、部屋の3割を作業スペースにしているなら、8/24 × 30% ≒ 10%、といった具合です。
電気・ガス・水道の按分(計算例)
電気代は、事業との関連がわかりやすいので按分しやすい費目です。基準としては次のようなものが使えます。
- 使用時間で按分 … 平日1日8時間、月20日仕事をするなら、8×20 ÷ (24×30) ≒ 22%。電気代が月12,000円なら約2,600円
- 部屋の面積割合で按分 … 家賃と同じ20%など
- コンセント数・使用機器で説明 … PC・照明・エアコンなど業務で使う機器の状況から割合を見積もる
ガス・水道は、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合に限られます(上記の国税庁の基準)。ここでの考え方は筆者の整理で、業務で水やガスを明確に使っていない場合は、区分できる部分が小さくなることが多いと考えています。
通信費(スマホ・ネット)の按分(計算例)
| 費目 | 按分の考え方(筆者の例) | 割合の例(筆者の計算例。国税庁が示した目安ではありません) |
|---|---|---|
| スマートフォン | 仕事の連絡・調べ物に使う時間や日数の割合。通話履歴やアプリの使用状況が根拠になる | 30〜50% |
| 自宅の固定回線 | 在宅で業務をしている時間の割合。家族の利用が多いほど割合は下がる | 30〜70% |
| 仕事専用に契約した回線・SIM | 事業専用なら全額 | 100% |
例:スマホ代が月8,000円で事業割合40%なら、経費は月3,200円(年38,400円)。自宅ネットが月5,000円で事業割合50%なら、経費は月2,500円(年3万円)です。
車両費の按分(計算例)
車は関連する費目が多いので、まとめて同じ割合で按分します。基準は走行距離がもっとも説明しやすい方法です。
| 前提 | 数値 |
|---|---|
| 年間の総走行距離 | 10,000km |
| うち事業のための走行 | 4,000km |
| 事業割合 | 4,000 ÷ 10,000 = 40% |
この40%を、次の費目にまとめて適用します。
- ガソリン代、駐車場代(コインパーキング等)
- 自動車保険料、自動車税、車検費用、点検・整備代
- 車両本体の減価償却費(取得価額を法定耐用年数で配分した額)
- 高速道路料金(事業の移動に使った分は全額でも可)
走行距離を毎回記録するのが難しければ、「週◯日、片道◯kmの現場に通う」など、使い方から合理的に見積もって根拠メモを残す方法でも構いません。使用日数(事業で使った日 ÷ 総使用日数)で按分することもあります。
よくある失敗
- 100%計上してしまう … 自宅家賃や私用スマホを全額経費にすると、プライベート利用がないことの説明を求められます
- 家族の利用分まで入れる … 通信費・光熱費は、家族の使用分を除いて考えます
- 年によって基準がぶれる … 去年は面積、今年は時間、と変えると不自然に見えます
- 根拠が何も残っていない … 割合だけ決めて資料がないと、調査で否認されやすくなります
- 少額すぎて手間に見合わない費目まで按分する … 金額が小さいものは無理に按分せず、明確なものから計上すれば十分です
按分後の税額・保険料を試算する
経費を増やすと、所得税・住民税・国民健康保険料がどのくらい変わるか確かめてみてください。
税金・保険料シミュレーターを試す →どの勘定科目で計上すればよいか迷ったら、勘定科目検索ツールも使えます。
勘定科目検索ツールを使う →やよいの青色申告 オンライン
- 国税庁「No.2210 必要経費の知識」(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
- 国税庁 所得税基本通達「45-1・45-2(家事関連費)」 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/07/01.htm
- 国税庁「令和6年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」(借入金利子の説明) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/pdf/019.pdf
- 弥生「やよいの青色申告」(初年度優待価格の記載を確認) https://www.yayoi-kk.co.jp/products/aoiro/
ここに挙げたのは主な参考資料であり、本文のすべての記述の根拠ではありません。制度や金額は改定されることがあります。最新の情報は、上記の公式ページでご確認ください。
確認日:2026年10月16日