開業届とは何か
開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。事業を始めたことを税務署へ知らせるための書類で、A4用紙1枚に住所・氏名・事業の内容・開業日などを書いて提出します。
提出しなくても事業自体は行えますし、所得があれば確定申告の義務も変わりません。ただし、青色申告をする前提になったり、屋号の口座が作りやすくなったりと、出しておくことで受けられる手続き上のメリットがいくつかあります。
提出のタイミングと期限
開業届(個人事業の開廃業等届出書)は、所得税法第229条(令和8年1月1日施行の改正後)で、事業を開始した等の事実があった日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならないとされています。国税庁の案内(No.2090、「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」)も同じで、提出時期は確定申告期限までです。改正前は、その事実があった日から1か月以内とされていました。
出すとどうなるのか
主なメリット
- 青色申告ができる … 青色申告承認申請書は「事業を行っていること」が前提。開業届と合わせて出すのが自然です
- 屋号付きの銀行口座を作りやすくなる … 多くの金融機関で開業届の控えの提示を求められます
- 小規模企業共済に加入できる … 加入時に事業を営んでいることの確認資料として使えます
- 補助金・事業用ローンなどの申請 … 事業実態を示す書類として求められることがあります
注意しておきたい点
- 失業給付(基本手当)との関係 … 会社を辞めて求職中の人が開業届を出すと、原則として失業給付は受けられなくなります(再就職手当などの対象になる場合はあります)。タイミングはよく確認してください
- 家族の扶養(健康保険) … 収入基準だけでなく、開業していること自体を理由に扶養から外れる運用の健康保険組合もあります。加入先の規約の確認が必要です
税金そのものが増えたり減ったりするわけではありません。デメリットは主に、他制度との兼ね合いで生じます。
一緒に出しておきたい書類
| 書類 | 提出期限 | 目的 |
|---|---|---|
| 所得税の青色申告承認申請書 | 原則その年の3月15日まで。1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内 | 青色申告(最大65万円控除・赤字の繰越など)をするため |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 青色申告承認申請書と同じ考え方(3月15日 または 開業・専従者が発生してから2か月以内) | 家族へ支払う給与を経費にするため |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 従業員を雇ってから1か月以内 | 人を雇って給与を支払う場合の源泉徴収の手続き |
とくに重要なのは青色申告承認申請書です。開業届と同時に出しておけば、初年度から青色申告特別控除を使えます。あとから白色に戻すこともできるので、迷っているなら出しておくほうが選択肢が広がります。
書き方の要点
記入で迷いやすいのは次の欄です。
- 納税地 … 通常は自宅の住所。提出先は、その住所を管轄する税務署です
- 屋号 … 店名・事業名。決まっていなければ空欄でも構いません(あとから確定申告書などで使えます)
- 職業 … 業種によって個人事業税の税率や課税の有無が変わります。実態に合った書き方をします
- 所得の種類 … 通常は「事業所得」にチェック
- 開業日 … 実際に事業を始めた日。青色申告承認申請書の2か月ルールはこの日が基準になります
- 「青色申告承認申請書」等の提出の有無 … 同時に出すなら「有」に
用紙は税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。控え用にもう1部作り、両方に記入して持参・郵送します。
提出方法
提出には3つの方法があります。
| 方法 | ポイント |
|---|---|
| 税務署の窓口へ持参 | その場で控えに収受印を押してもらえる。本人確認書類(マイナンバーカードなど)が必要 |
| 郵送 | 返信用封筒と切手を同封すると、収受印を押した控えが返送される |
| e-Tax(電子申請) | マイナンバーカードがあれば自宅から提出できる。会計ソフト各社が無料の作成ツールを提供している |
会計ソフト各社は、住所や事業内容を入力するだけで開業届と青色申告承認申請書を作成できる無料サービスを用意しています。書式に迷う場合は、そうしたツールで作成し、そのまま印刷またはe-Tax送信するのが手軽です。開業後は同じソフトで記帳を始められます。
開業後の税負担を試算してみる
開業してからの所得税・住民税・国民健康保険料の目安を、収入と経費を入れて確かめてみてください。
税金・保険料シミュレーターを試す →- 国税庁「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm
- 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
- 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
- 国税庁「A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/12.htm
- e-Gov法令検索「所得税法」第229条(開業等の届出)(令和7年法律第13号による改正後。令和8年1月1日施行) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
ここに挙げたのは主な参考資料であり、本文のすべての記述の根拠ではありません。制度や金額は改定されることがあります。最新の情報は、上記の公式ページでご確認ください。
確認日:2026年10月16日


