節税の基本の考え方
個人事業主の税金は、ざっくり言えば「(売上 − 経費 − 各種控除)× 税率」で決まります。負担を下げる方向は3つあります。
- 経費を漏れなく計上する … 事業に使ったお金をきちんと記録する
- 所得控除を使い切る … 社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除など、条件を満たすものを申告する
- 有利な申告方法を選ぶ … 青色申告特別控除、e-Tax、消費税の特例など
大前提として、税金を減らすために不要な支出をするのは逆効果です。1万円使って節税できる税金はその一部にすぎず、手元の現金はむしろ減ります。「使わずに済むお金は残す。使ったお金は正しく計上する」が基本姿勢です。以下は、すでに払っているものや、貯蓄・保障を兼ねられるものを中心に整理します。
経費まわりの見直し
- 家事按分 … 自宅の家賃・電気代・通信費・車両費のうち、事業で使った割合を経費にできます
- 少額減価償却資産の特例 … 青色申告なら、パソコンなど40万円未満のものを買った年に一括で経費にできます(年間合計300万円まで。令和8年3月31日までに取得した資産は30万円未満)
- 短期前払費用 … 1年以内のサービスを年払いした場合、一定の条件で支払った年に全額経費にできます(家賃・保険料など)
- 貸倒れ … 回収できなくなった売掛金は、要件を満たせば損失として計上できます
- 事業用の口座・カードを分ける … 直接の節税ではありませんが、経費の取りこぼしが減り、按分の説明もしやすくなります
所得控除をフルに使う
所得控除は、条件を満たしていれば申告するだけで所得を減らせます。「払っているのに申告し忘れている」ものがないか確認してください。
| 控除 | 対象 |
|---|---|
| 社会保険料控除 | その年に払った国民健康保険料・国民年金保険料の全額。家族の分を代わりに払った場合も含む |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済・iDeCoの掛金の全額 |
| 生命保険料控除・地震保険料控除 | 加入している保険の保険料(上限あり) |
| 医療費控除 | 年間の医療費が一定額(目安10万円)を超えた分。生計を一にする家族の分も合算できる |
| 配偶者控除・扶養控除 | 生計を一にし、所得が一定以下の配偶者・親族がいる場合 |
| ひとり親控除・寡婦控除・障害者控除 | それぞれの要件に該当する場合 |
| 基礎控除 | 合計所得金額に応じて自動的に適用される |
とくに国民年金保険料を「まとめて前納」した場合は、その年に全額を控除するか、各年分に分けて控除するかを選べます。所得が高い年に前納・全額控除すると、節税効果が大きくなります。
「小さな事業の退職金」制度
個人事業主には退職金がありません。その代わりになるのが、次の積立制度です。掛金が所得控除または経費になるため、老後・廃業への備えをしながら税負担を下げられます。
| 制度 | 掛金の上限 | 税務上の扱い |
|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 月1,000円〜70,000円 | 掛金の全額が所得控除。廃業・退職時に共済金を受け取る |
| iDeCo(個人型確定拠出年金) | 自営業者は月68,000円(国民年金基金と合算の枠)。2026年12月1日から月75,000円に引き上げられる予定です(厚生労働省) | 掛金の全額が所得控除。運用益も非課税 |
| 付加年金 | 月400円 | 国民年金保険料に上乗せ。将来「200円 × 納付月数」が毎年もらえる |
| 国民年金基金 | 月68,000円(iDeCoと合算の枠)。2026年12月1日から月75,000円に引き上げられる予定です(厚生労働省) | 掛金の全額が社会保険料控除 |
| 経営セーフティ共済(倒産防止共済) | 月5,000円〜200,000円(上限800万円) | 掛金を必要経費にできる。継続して1年以上事業を行っていることが加入の条件です(中小機構) |
申告方法と消費税まわり
- 青色申告特別控除 … 複式簿記 + 期限内申告 + e-Taxで最大65万円。会計ソフトを使えば実現しやすい
- 青色事業専従者給与 … 事業を手伝う家族への給与を、届出の範囲内で全額経費にできる(白色は上限のある控除のみ)
- 赤字の繰越 … 青色申告なら、赤字を翌年以降3年間の黒字と相殺できる
- インボイスの2割特例 … インボイス登録で課税事業者になった場合、一定期間は消費税の納税額を売上税額の2割に抑えられる
- 簡易課税制度 … 課税売上5,000万円以下なら、業種ごとのみなし仕入率で消費税を計算でき、実額計算より有利・簡単になる場合がある
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やってはいけない節税
次のようなものは節税ではなく、脱税や否認の対象です。
- 実際には買っていない経費を計上する(架空経費)
- 家族旅行や私物の購入を事業の経費に混ぜる
- 実際には働いていない家族に専従者給与を払ったことにする
- 売上を翌年に付け替えて先送りする
これらは調査で判明すると、本来の税額に加えて加算税・延滞税が課されます。節税は「制度が認めている範囲で、有利な選択をする」ことであって、事実を変えることではありません。
節税策の効果を試算してみる
青色申告特別控除や小規模企業共済の掛金を入れると、税額と保険料がどのくらい変わるか確かめてみてください。
税金・保険料シミュレーターを試す →ふるさと納税は厳密には節税ではありませんが、実質2,000円の負担で返礼品を受け取れる制度です。上限額の目安はこちらで確認できます。
ふるさと納税シミュレーターを試す →税金や経費のことは整理できても、老後資金や家計全体まで含めたお金の不安は、なかなか一人では整理しきれないという人もいると思います。そういうときは、国家資格を持つファイナンシャルプランナーに無料で相談できる窓口を使ってみるのも一つの方法です。
- 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 厚生労働省「2025年の制度改正」(iDeCo・国民年金基金の拠出限度額) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html
- 中小機構「小規模企業共済」 https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/
- 中小機構「経営セーフティ共済」 https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/
- 国民年金基金連合会 https://www.npfa.or.jp/
- 日本年金機構「付加保険料の納付」(更新2026年7月23日) https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/fukanofu.html
- 弥生「やよいの青色申告」(初年度優待価格の記載を確認) https://www.yayoi-kk.co.jp/products/aoiro/
ここに挙げたのは主な参考資料であり、本文のすべての記述の根拠ではありません。制度や金額は改定されることがあります。最新の情報は、上記の公式ページでご確認ください。
確認日:2026年10月16日
